元ペットショップ店員で、複数の店舗の管理経験のある私から、これからペットショップで働いてみよう、ペットショップでアルバイトしてみようという人へちょっとしたアドバイスをしたいと思います。
私が従事していたのはホームセンターなどにインショップで入っている、いわゆるチェーン展開しているショップ。ペットブームに乗って、また、ホームセンターやショッピングセンターが集客のためのマグネットとして売れないインテリア部門の代わりにペットショップを導入していった流れに乗って成長した企業でした。情報収集する限りでは今でも頑張っておられるようです。
こういう形態のショップといわゆる「三ちゃん経営」と言われる家族+αで運営するペットショップでは違いがあるものの、業界の構造自体は同じだと思います。
路面店だと敷居が高くてなかなか入れないペットショップも集合店舗に入っているとすごく入りやすく、行きやすくなりますから、興味のない方もフラっとペットショップを訪れ、何度か行くうちに「動物に囲まれて働いてみたい」と思う方も多いはずです。
そういう方の志望理由のほとんどが「動物が好きだから」「家でも動物を飼っていて興味があるので」というもので、確かに好きこそものの上手なれではあるのですが・・・でもちょっと待った!!ペットショップには「好き」では解決できないいろいろなことがあるのです。それを知った上で働くのとそうでないのとでは働き始めてから受ける印象がまるで違いますから、働き手と雇用主双方から見て「こんなはずじゃなかった」とならないためにも参考になれば幸いです。
採用のハードルは低め
あまり学歴や専門知識についてこだわることは少ないです。逆に動物系の専門学校卒の人などは余計な知識を持っていることからそのショップが培ってきたやり方を働き始めてすぐに否定したりすることもあるという懸念から敬遠する場合もあります。
履歴書の内容から適正を見るのは難しいので、とりあえず面接してというのがほとんどのパターンです。他業種ではまず書類選考をしてというのが普通の段取であることが多いのと比べると、応募の電話をしたときの印象さえ良ければ面接してもらうことは容易な業界だと思います。
そして採用に関しては、履歴書の経歴というよりは面接での印象が第一、特に趣味・ホビー分野ですからお客様とコミュニケーションが取れるかどうかが重要視されます。つまり人当たりのいい人、受け答えが的確ではっきりしている人はその場で即採用なんてこともあります。
そして独自ノウハウの多い(こだわりの強い)業種ですから採用後は掃除などの雑用の日々が待っています。職人肌で「背中を見て盗め」という感じのところが多いと思います。
そういう観点から働き始めてすぐに辞めてしまう人も少なくありません。当然ショップ側もそういう覚悟で採用することが多いですから、採用されたものの・・・という感じは否めないと思います。
ペットショップと言ってもいろいろな部門があり、水を大量に使ったり、粉塵を吸うことがあったりしますから手荒れやアレルギーなどが出る方もいますので応募前に埃っぽいところへ行った時に体調を崩したことがないか、また手が荒れることは承知の上で応募するようにしましょう。
決してきれいな労働環境ではない
ショップの表(店頭)でお客様として見ているのはショップの一番きれいな部分だと思ってください。当然動物なので排せつをし、体臭もありますから朝・夕の清掃美化作業については結構きつい部分があると思います。
それから生き物として仕方のないこととして「残念な場面」を目の当たりにすることもあります。そんなとき「(生きている)動物が好きで」という動機で働き始めた方は、最初のギャップに遭遇します。
ペットショップはもちろん「動物を飼育することにより心の安らぎ」をお客様に提供するために活動しています。ただそこにはお客様に販売することで利益を得るという目的と利益を出し続けていなければ運営できない側面もあります。商売ですから当然ですよね?
そこで商売という観点から費用をかけて対処すれば助けられる命を犠牲にしなければならない場面が出てくることがあります。助かる可能性のある動物に費用をかけて対処した後に販売できるのか?というのが常につきまとう業界なのです。当然動物ですから成長もします。長期の療養となってしまえば大人になってしまうこともあます。逆にお客様はなるべく小さい頃から一緒に過ごしたいと思っています。まして最初に提示した価格に治療費用を上乗せして販売することもできません(あなたがお客様だったら「この子はこんな病気してこんな費用がかかったから負担してください」と書かれた動物を購入しますか?)。
常にショップはその葛藤の中で商売していますからとても「動物が好きで・・・」で勤まるものではありません。

正社員としての採用は結構厳しい
前述したように結構門戸の広い業界ですからひとまずアルバイトで採用というショップが多いです。頑張れば正社員にというところもありますが何年か経って初めて実現するかもしれない程度と考えたほうがいいと思います。
ペットショップで扱う商品や動物はホビーであり、ブームや世間の流れに左右されやすいので商売の安定性という面は無機質なものを扱う企業と比べて大変な業界ですから、正社員として固定的な人件費をかけることを避ける傾向があるのは間違いないでしょう。
そして、時間給労働者であるアルバイトやパートであっても定期的な労働協定の変更によって採用時の条件とは全くことなる環境となることもありますし、そもそも小さな業界なので労働協定がないなんてところもたくさんありますので、安定的な時間と収入を得られるかというと決してそういうことではないと考えた方がいいと思います。
以上、これからペットショップで働いてみようという方の参考になれば幸いです。