鈴虫は夏の暑い最中、「リーンリーン」という涼し気な羽音が魅力の昆虫です。
だいたい4月後半位からペットショップでも卵が売られ始めるので、飼育しやすくなってきました。夏前になれば成虫のペアも販売されますが、できれば卵の時季から飼育を始めて成長していく様子を観察するというのが醍醐味ではないかと思います。
また鈴虫は孵化や産卵期の準備をしっかりすれば、何世代でも何年でも楽しむことができる身近な昆虫ですから、一度きちんと知識を得ればそれほど飼育が難しい昆虫でもありませんから気合いを入れずにチャレンジしましょう。
鈴虫は基本的には孵化してから4~5か月が鈴虫の一生になります。その間に「孵化」「羽化」「産卵」と進んでいきます。一生は短いですが、生き物の栄枯盛衰がしっかり観察できますし、産卵した卵を来年孵すこともできますから、お子様の情操教育にも役立つと思います。
鈴虫の一生
ここでは鈴虫の一生はどうなってるの?飼育に必要な道具や器具は?実際の様子を元にした飼育方法について紹介します。
孵化
ゴールデンウィーク前後から卵の孵化が始まります。目安は日中の土の温度が20℃を越えたあたりだと思われます。
人工的に管理されている鈴虫の卵は自然に孵化し始める訳ではなく、卵がある土に水分を与えて「もうそろそろ孵化の時期ですよ」と自然で五月雨のような環境を整えてあげると卵がどんどん孵り始めます。

幼虫~羽化まで
米粒大でまだ羽の生えていない幼虫がどんどん姿を現します。何度かの脱皮を経て体がだんだん大きくなり、羽化します。
羽化~成虫
7月~8月あたりで徐々に羽化が始まります。羽化したばかりの羽は白っぽく大変弱いです。
繁殖と産卵
9月頃になると、みるみるうちに羽がボロボロになるオスとよろよろと歩くメスが目立ってきます。これは繁殖と産卵を行っている証拠で一生懸命子孫を残そうとしている行動です。
鈴虫の飼育に必要な道具
- 水槽やプラスチックのケース
- 登り木、止まり木
- 土
- 霧吹き
- 成長に合わせたエサ
鈴虫飼育をするための道具選びのコツ
- どんな容器でも飼育は可能ですが、蒸れないようになるべく開口部の広いものを使うようにします
- 結構高くジャンプしますので、網のふたなどが必要です
- 登り木や止まり木は飼育容器中の飼育面積を広げるために必要です
- 天然の枝などを使う場合には雑菌の混入を防止するため1日以上水に浸けてから完全乾燥させた上で使用します
- 土は昆虫用の腐葉土で十分ですが、一度黒いビニール袋などにいれて天日に当て殺菌してから使うとなおよいです
- 腐葉土の他園芸用の鹿沼土なども使えます(文末の「片づけや来年が楽になる産卵期の一工夫」を行う方は腐葉土を使わないほうがいいでしょう)
- 幼少期は鰹節や観賞魚用のフレークフードなどを与えます
- 成虫になったら鈴虫用のフードを与えます
- きゅうりやナス、スイカなどを与える場合は残ったものを確実に取り除くようにします
- エサは土に直まきするとカビが生えたり腐ったりしますので浅い器で与えるようにします
- 水は基本的に土にのみ掛けるようにし、水溜りができないようにします
- 土の厚さは飼育期(孵化~羽化後まで)は薄めにし、全員が成虫になったら産卵に備えて厚めにすると土が痛んだり腐敗したりすることなく飼育できます
鈴虫を飼育する環境の例

特にこれといって決まりはありません。成虫になったときになるべく歩く場所や隠れる場所を作っておくというのが基本です。幼虫の頃はそこまで考える必要はありません。
こんなものも飼育道具として使えます
鈴虫用木炭を必ず使う必要はなく、夏場には安く販売されているバーベキュー用木炭でも全く構いません。ただ、安価なものだと焼きが甘かったり柔らかかったり、炭の色がいつまでも手に付いたりということはありますが、飼育に関しては特に気にする必要はありません。
エサ皿は何でもOKです。食品トレーを小さく切って使えば使い捨てにできますし、缶のブラ蓋なども十分使えます。要は鈴虫たちがちゃんとエサを食べれて、なるべく足が滑らずに動けるようであれば何でもいいのです。
道端などに落ちている石や木も使えます。大きなレイアウトをするにはこうしたものを利用するのがいいです。が、前述した通り外敵を入れないためにきちんと処理をしてから使うようにしましょう。
一緒に観葉植物なども育成できます。が、大抵のものは食べてしまうことが多いですから試してみるしかありません。比較的湿度が高く、葉が丈夫な「スパティフィラム」などのテラリウムに向いた観葉植物がお勧めです。

鈴虫の飼育のしかた
孵化期
- いったん孵化が始まってしまうと土を足したり入れ替えたりということがしにくくなりますので、卵を入れる前に環境をしっかり整えるようにします
- 水分が不足していたり、乾燥と湿潤を繰り返したりすると孵化率が下がりますので、いったん土に水分を与えたら土が乾燥しないようにしましょう
- 卵の入った土に水分を与えたときから孵化が促進されますので、この時期を前後させることで飼育時期を調整することができます。より秋口まで長く飼育したい場合には遅めの時期に水分を与えるようにします
幼虫~羽化
- この頃は土の養分と水分、様子を見ながら鰹節や熱帯魚用のフレークフードなどを与えるようにします。エサ場に辿りつけなかったり、少しの水溜りで溺れてしまうことがあるので注意しましょう。
- また、土に直接エサを撒くとカビが生えたりエサが腐敗したりしますので、エサはプラスチックの板や食品トレーを平らに切ったものなどの上に乗せて与えるようにします。
- 羽化したばかりの羽に水がかかると変形したり羽が閉じられなくなったりしてしまいますので土や水槽の面に水を与えるようにしましょう。
- 孵化の時期の違いから体の大きさがあまりにも違う場合には成虫を別の容器に移しながら飼育します

鈴虫の幼虫の写真(2016年5月25日撮影)
幼虫が初めて確認できたときの写真です。卵から孵化したばかりの幼虫の大きさが分からないため何とも言えませんが、孵化から1週間程度ではないかと思います。
鈴虫の幼虫が動き出した 160526 214357
鈴虫の幼虫が動く様子を撮影したYoutube動画です

鈴虫の幼虫の食事(カツオブシ)写真(2016年7月11日撮影)
鈴虫の幼虫の様子(2016年7月11日撮影)
まだ雌雄判別はできないようです。もう1回か2回脱皮すると♀は真ん中に長い輸卵管が生え、♂は大きな羽が生えてきます。
成虫期
- あまりにも過密な場合には容器を分けるようにしましょう
- 特にオスは縄張り意識が強いので、エサ場は複数用意しましょう
- 野菜などを与えてもいいですが、必ず痛む前に取り除くようにしましょう
- 産卵に備えて土が底から5㎝以上になるように調整しましょう
- 土が固いとメスの産卵管が地中に挿せず産卵できないことがあるので時折箸などでさばいて常に土を柔らかくしておきましょう
- 輸卵管を土に挿して産卵しているメスを見つけたら以降は土を掻きまわしたりしないようにしましょう
※2016年7月29日/成虫になったオスが鳴き始めました。5月25日に幼虫がいるのを確認していますから、孵化して約2か月~2か月半で成虫になることが分かりました。

最後に脱皮した幼虫の殻とまだ羽が白いオスの成虫写真(2016年8月7日撮影)
奥が殻で手前が脱皮したてのオス成虫。脱皮した殻は自身ですぐに食べてしまうのでなかなか脱皮した個体と殻が一緒に撮影できることはないので珍しいショットです
産卵期・晩期
産卵期・晩期になると繁殖を行うために一生懸命オスは羽をすり合わせ、メスは一生懸命卵を産みます。しだいにボロボロになり、一生を終える個体がたくさん出てきます。
死んでしまった成虫は他の成虫によって食べられてしまいますが、いわゆる「共食い」ではなく他の動物に食べられないようにしたいという種の保護の目的があるようですから、残った羽や足を取り除いてあげる程度にしてストレスをかけないようにします。
- 成虫が全ていなくなったら土への給水をやめます
- 卵は土の中へ無数に産み付けられていますので、ある程度の土をビニールなどに移したらあとの土は処分します。ビニールに移した土は空気が触れるように口を開けて保存します(洗浄した飼育容器の中に入れて大丈夫です)
- 来年のために飼育容器や土を洗浄しておきましょう。
- 登り木などは洗浄した後水に浸け、その後天日干しをして完全に乾燥させるようにしましょう
何年かに1度は新しい血を入れる
近縁交配が進むと奇形が出たり、産卵数が減ったりしますので、何年かに一度は別の卵または成虫を足して血が濃くなるのを防ぎましょう。ペットショップなどで購入するのもいいですし、知り合いなどと交換する方法もいいです。
片づけや来年が楽になる産卵期の一工夫
産卵期に入ってしまってからこの記事を読まれた方は是非来年からやってほしいのですが、通常メスは一番産卵管が挿しやすい場所で、かつ安全な場所へ卵を産もうとします。この特徴を生かして「インナー産卵所」を成虫で元気にしているうちに作っておきます。使うのは
- 鈴虫用やカブトムシ・クワガタ用の腐葉土
- タッパーや食品トレー
です。もうピンと来た方はいると思いますが、すぐに取り出せるようにタッパーなどに腐葉土をいれて産卵用の土を用意しておくということです。普段使う土が腐葉土の場合には使えない方法ですが、私のように鹿沼土など比較的産卵しにくいごつごつした土で飼育している方はこの方法で随分手抜きができるようになります。
片づけはタッパーやトレーごと腐葉土を取り出し、タッパーなら蓋に少し穴を開けて保存、トレーなら同じ大きさのトレーに少し穴をあけてかぶせておくだけで翌年はこれに水を与えればOKになります。あとの土は来年使いませんからそのまま廃棄できるので片づけも簡単です。
最後に
鈴虫はきちんと管理してあげれば非常に丈夫な昆虫です。よくある失敗は水枯れ、エサ切れ、飼育容器内の蒸れ、過度の過密飼育などです。1匹のメスから30~40個の卵を産みますので卵をあまりたくさん保存してしまうと翌年以降飼育容器を増やすことになったり、飼育が大変になったり、当然成虫になれば鳴くので音が大きくなってしまったりしますからある程度間引くことも大切です。卵の含まれている土はゴミとして廃棄するのではなく知り合いに譲ったり土に返してあげたりしましょう。
蚊取線香や薬剤式の蚊取器は同じ昆虫である鈴虫にも影響がありますので使わないようにしましょう
2017年の日記、はじめました
鈴虫飼育グッズ


